建築物を写真に撮って第三者に提示すると、その建築物がどんな形状、どんな佇まい、どんな外観であるかを伝えることができます。写真は、撮った地点から見える建築物の様子をまぎれもなく表現してくれています。パースも、その写真と同じ役目を担うために描かれています。しかし、パースは撮った写真を提示する場合にはできないことがいろいろ可能です。
写真の場合、その建築物がすでにその敷地に建ったあとでないと撮ることはできません。対象物が存在しないのであれば写真には撮れません。撮る時の天候や時間にも左右されてしまいます。また、その建築物の手前に別の建物など視線の障害になるものがある場合や、上の方から全体を見下げて撮りたくてもその位置でカメラを構えることができなければ、撮ることはできません。
パースは、その建築物がまだ完成する前であっても、手前に邪魔物があっても、そのようなことには関係なく、空中からでも、どのような位置からでも、まったく自由に視点の位置を設定してその建築物を描き表すことができます。また、建築物の外壁にある電線の引き込み部分、換気パイプ、デザイン的に関係のない雨樋なども自由に省略します。手前の道路を走る車は好きな車種で描き、添景の人物も好みの位置に配置し、周囲の景観も許すかぎり自由に描くことができるのです。そういう意味で、パースは自由自在です。 |