透視図法 で作図するということはコンピュータパースも手描きパースと同様です。コンピュータで作図する場合、つまらない比較でよく言われることですが人間のように間違えはしません。また、細かい作図、繰り返し作業にも根を上げません。
しかし、透視図法には “ 重大な不都合 ” があります。透視図法は人が発明しました。パースを描くにはまず透視図法で作図する以外の方法はありません。コンピュータで作図する場合、透視図法を正しく活用しますから、 “ 不都合 ” がそのまま作図したものに反映されます。手作業ではこれを補正することができます。(パースの描き方に関する書物は数ありますが、 “ 透視図法の重大な不都合、そしてその対策 ” に言及している本はほとんど見かけません。透視図法の不都合に気づいてもいないとも言えます。)
明暗遠近法、色彩遠近法などの観点からもコンピュータパースには不備が多くあります。たとえば外壁の庇の影は暗くします。しかし、影の大きさによる影響、視点からの位置、また明度対比などによりその暗さを決めるべきです。目立たせたくない庇であるならば弱く表現したいところです。建築物の外壁の目地は、形状、寸法が一定です。したがって目地が遠景になれば細くなり、色みは薄く表現したいところです。このようなことはコンピュータパースの場合は配慮できません。
パースの添景もいろいろ描くことになりますが、近景の物と遠景の物と同じ詳細で描いては遠近感がでないでしょう。実物が同じ色みであっても同じ色みをぬり着けては、違った色みに見えてしまいます。
コンピュータパースは一言でいうとその視点から対象物を眺めたとき、視点と対象物の間に存在する空気が描かれていないのです。雨上がりのときの埃のないような鮮明な景色のように、建築物、添景すべてに公平です。きれいな仕上がりです。しかし、活性が感じられません。遠近法がないがしろにされているのです。 |